被爆2世の肖像

 終戦から72年、その数19万人とも推定される広島や長崎の被爆者たちも平均年齢は80歳を越え、毎年数千人が鬼籍に入る。病と闘いながらも自ら原爆被爆者援護法を作り上げてきた。
 今、その子どもたちが社会の中核となり、また家庭を築いて子供を育てている。
「自分が受けた差別を子どもには与えたくない」と被爆の事実を子どもに打ち明けない親も多いと聞いた。しかし、被爆2世という事実を消すことは出来ない。
「現時点では親の被爆による影響を示す証拠は2世に見られなかった」
 これは広島と長崎の放射線影響研究所で2001年から行われていた被爆2世健康影響調査の解析結果だ。しかし、これで問題が解決したわけではない。
「寝た子を起こすな」という意見もあるが、2世自らが正しい情報を発信していかなければ差別や偏見はなくならない。3世や4世が同じ問題に悩まされることがあれば、 それは何もしなかった私たち2世の責任になる。怒りや恐怖など負の遺産だけではなく、希望を伝えるのも2世の役目ではないだろうか。2世の中には親から被爆体験 を受け継いで語り部となった人、直接に被爆や戦争体験とは関係ない一般社会で自分の道を確立した人、幸せな家庭を築いた人、それぞれの2世の生き方がある。しかし、平和に対して敏感であったり、他人に対して優しくあったり、家族愛や思い遣りなど自分が意識するしないに関わらず、そこには被爆者である親の後ろ姿を見て育った共通点があると思う。私自身、母親が長崎で被爆した被爆2世だ。これまでフォトジャーナリストとしてカンボジアやアフガニスタンなどで戦場報道も経験してきたが、ある時、自分が歩んできた道は親の被爆体験と無関係ではないのでは、という考えが生まれた。それがこの撮影を始める出発点となった。
 日本がアジアを侵略した事実、日本国民も戦禍に苦しんだ事実、そして広島と長崎に原爆が投下された事実が風化していく中で、私たち被爆2世にできることは何だろうかと考えた。イラクアフガニスタンパレスチナ、アフリカなど世界各地で戦禍が絶えない。最近では国防軍や核武装と行った勇ましい声が国内からも聞こえてくる。「過ちは繰り返しませぬから」と誓った被爆者のためにも、私たち2世にできることは自ら声を挙げることではないだろうか。私は写真家として2世のありのままの姿を撮ることで、2世や3世への差別や偏見など誤解を解くとともに、これが平和のメッセージとなることを信じています。
 ぜひ皆さまのご協力をお待ちしています。E-mailでご連絡いただければ詳細をご案内します。
                                        吉田 敬三

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