9世紀から13世紀にかけて栄えたクメール王国のアンコール遺跡群で有名なカンボジア。森林の中には大小百余り遺跡が散在する。アプサラ(天女)たちがアルカイック・スマイルで訪れる観光客を魅了する。 二十数年間にも及んだ内戦も終わり、再建を目指すカンボジアだが、日本の約半分の国土に1000万人の総人口に並ぶほどの地雷が未だ埋まっている。 カンボジア人が「ミン」と呼ぶ地雷は、米国製、中国製、旧ソ連製とその種類は52種類にも及ぶが、カンボジアで作られた地雷は無い。大国のエゴに振り回され続けた結果、35,000人(1996年当時)以上の人々が手足の切断手術を受けた。 「カンボジアでは手足の一本一本を使って地雷を除去している」とさえ言われたこともある。 子供の場合はさらに悲惨で、10歳以下の子供の生存率は皆無に等しい。なぜならば、頭の位置が低いために、地雷爆発の影響を直接受けるからだ。 一度埋められると、戦争が終わっても半永久的に獲物を待ち続ける地雷。相手が兵士か農民かを問わず、無差別的に殺戮を繰り返す。「悪魔の兵器」と呼ばれる所以だ。 地雷の技術的発達は除去のそれをはるかに上回る速度で進んでおり、現在では地雷探知機に感知されにくいプラスティック製の地雷も製造されている。最終的には人間がひとつひとつ手探りで探すしかない。 対人地雷全面禁止条約が99年に発効したが、地雷大国のアメリカや中国は参加していない。また、すでに市場に出回っているものや、人知れずに埋設されている1億個以上の対人地雷はこれからも多くの人命を奪い続けるだろう。
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